間違いだらけの歯医者選び ~本物の歯科医療を選ぼう~

失った歯を入れる歯医者選びは間違い

多くの患者さんは歯に空いた穴を埋めたり、失った歯を入れたりすることが歯科治療だと考えています。
また歯科医師自身も歯の修理を中心に歯科医療を提供しています。
しかし歯に穴が開いたり、歯を失うというのは手の指を失うのと同じぐらい大きな出来事です。
ですから大切なことはなぜ歯を失うようになってしまったのかというその原因を突き止め、新たな犠牲となり失う歯がなくなるように取り組むことです。

歯科医療は歯を治す技術として進化してきたため、歯医者を歯の修理屋として考える慣習は仕方がないものかもしれません。

しかし健康な口で歯を失うことが無いようにするためには、歯の修理の前にその原因を取り除くことが重要であり、そのように原因療法として取り組む歯科医師を選択することが大切です。

保険治療が標準治療というのは間違い

歯科医学では発生した口の中の問題を改善し、本来の機能を取り戻すことを目的として、様々な方法が考案されてきました。
先人たちが開発したそれらの方法、また最新の歯科医療を有効に選択すれば、口を健康な状態に戻すことが可能です。
しかしながら健康保険制度により提供される歯科医療は、その方法の一部しか認めていません。
これは憲法第25条が掲げる「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という条文に基づき整備された社会保障制度であるためです。

もしあなたが最低限度の生活を維持する程度以上の良質の歯科医療を望むのであれば、保険制度による歯科医療では不足です。

保険治療は決して標準の歯科治療ではないということを知っておかなければなりません。

予防歯科に行けば歯が守れるというのは間違い

健康な歯を守るという目的に準じ、予防歯科を標榜する歯科医院が増えました。
しかしながらこれらのほとんどの歯科医院で提供される予防医療とは、歯科衛生士による口腔衛生指導と定期的な健診です。
口の中で歯を壊してしまう病気には、細菌による虫歯・歯周病と、無理な力により歯が壊れる咬合病とがあります。
ですから歯科衛生士の介入により細菌を取り除くだけでは、力の問題による歯の崩壊から歯を守ることができないのです。

歯を健康に使い続けるために予防的な歯科医院の利用をお考えならば、必ずかみ合わせも含めて、口の中を総合的に管理してくれる歯科医師を選択しなければなりません。

治療方針を歯科医師に任せるのは間違い

旧来の医療の概念はパターナリズムをベースとしており、医療者は患者の利益を鑑みて、医療上の判断は患者にさせることなく、より良い方向へと患者を誘導するというものでした。

しかし現在の医療倫理基盤の世界標準は患者中心へシフトしており、患者自身が自分に合った医療内容を自らの意思で選択することを基本としています。

そのためには医療選択に必要な情報を医療者から提供してもらい、十分な相談を受け、決めるという、患者自身がインフォームドコンセントを行うことが必要です。

ですから歯科医師に治療方法の選択を委ねるという考え方は改め、自分自身で自分の受ける医療を選択するという行動をとることが必要となります。

健康を支える歯科治療の時代

歯科医療は一般医療よりも重要度の低いものとして扱われてきた歴史があります。

しかしながら医学的な知見を病気の治療に使うのではなく、病気にならないという予防医療の取り組みに活用しようとするとき、歯科医療は健康な身体を維持するためにもっとも重要な役割を担うという事を知っておかなければなりません。
感染のルートを遮断し、全身の細胞が必要とする栄養を摂取し、酸素を効率的に確保するためには口が重要な役割を担うからです。

あなたが本当に健康であり続けることを望むのであれば、適切な主治医を見つけ、健康についてしっかりと相談し、二人三脚でしっかりと取り組むことが必要です。

良質の歯科医療があなたの豊かな生活を守ります。

インフォームドコンセントしてますか?

患者中心の医療とは

患者さんは病気やその治療法については素人であるため、どのような治療を受けるのかについてはどうしてもお医者さんの指示に従わざるを得ませんでした。
しかし時代の流れは、患者さんがお医者さんにお任せするのではなく、患者さん自身が主体的に医療を選ぶという時代となっており、これが患者中心の医療です。

この患者中心の医療では、

①患者の期待に沿っている        ②患者の権利が守られている

という2つの要件を満していることが必要です。

患者の期待に沿っているとは、患者さんの「どんな状態にしてほしいのかという希望」に合わせた処置を行うということです。

このためには患者さんは自分の希望を伝え、お医者さんは患者さんの希望を聴き取るという手順を一連の治療の開始の前に行うことが必要です。

歯科治療において患者さんから伝えられる希望には、
希望が叶う・叶わないにかかわらず、

「歯を失いたくない」

「おいしく食事をしたい」

「美しい笑顔でいた」

「入れ歯やいやだ」

などといった事柄が多いようです。

患者の権利が守られているとは、患者さんが自分の期待とおりの結果を手に入れるために必要な医療を受けるために基本的人権として守られるべき事柄となります。

患者の権利とはどんなもの?

1995年第47回世界医師会総会で採択された
「患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言の改訂」では
この患者の権利について6つの要素を取り上げています。

①医療に対する参加権…医療制度の構築に当たっては、 行政・医療者のみならず
 市民の代表も参加できる

②知る権利と学習する権利…患者は自分の病気や治療法について医療者から
  教えてもらうことができる

③安全な医療を受ける権利…感染の危険などを排除した安全な治療が受診できる

④最善の医療を受ける権利…制度や費用に関わらず、常にその条件下での
ベストの治療を受診できる

⑤平等な医療を受ける権利…人種や地位などに関わらず、平等の内容の治療を
  受診できる

⑥医療における自己決定権…どんな治療受けるかは患者自らが自分の意志で
 決めることができる

これらの権利のうち最も重要とされているのが、医療における自己決定権であり、
これがインフォームドコンセントです。

インフォームドコンセントは患者さんが行うこと

患者さんがインフォームドコンセントを行うに当たってお医者さんは、
患者さんを脅したりや不適当な誘導を行うことなく、専門用語などを使わない
わかりやすい言葉や方法により、

①診断の評価

②提案する治療の目的・方法・予想される期間・期待される効果

③ほかの治療方法

④提案した治療方法で予想される苦痛・深い・危険・副作用を
 説明しなければならない

としています。

つまり、医療に対して知識のない患者さんは、知る権利と学習する権利を使って
お医者さんから情報を入手し、その情報に基づいて自分の期待を叶える医療を選択
するというものです。
お医者さんはこの患者さんの権利を守るための義務を負っているのです。
患者中心の医療を受けるということは、患者さん自らが患者としての権利を行使し、
お医者さんの支援を受けて、自分に合った医療を自己決定するということから
始まるのです。

あなたが自分に合った治療を納得して受診するためには、お医者さんとしっかり
コミュニケーションをとることが必要な時代になっているのです。

歯科医療の奔流:患者中心の医療を受けよう

今までの医療

ある患者さんが医者に行った時の笑い話にならない話です。

朝から熱っぽく寒気がして咳が出ている様子から、通院先の先生に
「どうも風邪をひいたようです。注射をしてもらえませんか?」と申し出たところ、
この先生から怒られることになりました。

「誰が風邪と診断したんや! 患者が診断して治療方針を決めるとは何事
や。医者の私が風邪と診断したうえで処置を決めるから、その通りに治療を
受けなさい。」といった具合です。

今までの医療は、医者が診断をし、患者さんの利益となる治療方法を考え、
患者さんはそれに従うという医療者中心のスタイルだったのです。

医療の世界標準は「患者中心」

様々な業界と同様に、医療の世界も変化しています。

その大きな変化のポイントは「医療者中心の医療」から「患者中心の医療」への
変換です。「患者中心の医療」とは、病気や治療に関する様々な情報について
わかりやすく提供を受け、その中から患者さんが自分に合った納得できる方法を
選択するというやり方です。

この「患者中心の医療」では、2つの事柄が満たされている必要があります。
1つには患者の期待に沿った医療であることであり、もう1つは患者の権利が
守られることです。

ではこの2つのことについてもう少し深く考えてみましょう。

患者さんの期待に沿っている医療であるためには

患者さんの悩みは様々です。そしてまた治療した結果に対する期待にも
人それぞれ違います。

とくに歯科医療では、治療の結果が患者さんの生活の質に深く影響することから、
医療者は個々の患者さんの期待をしっかりと聴き取らなくてはうまくいきません。

美しく若々しい口元でいたいと希望される方、おいしくなんでも食べたいと期待され方、カラオケが趣味でうまく発声できる口でなくてはならないと期待される方、様々です。

歯科医療者はこれらの個別の期待にうまく対応するため、様々な歯科医療技術を
習得しており、それを提供するわけですが、そのためには患者さんが何をどのように
期待しているかを聴き取らなければなりません。

患者さんの期待に沿った医療であるためには、患者さんの悩みをじっくりと聴き取り、どのような対応がベストであるのかを見極めるための十分な相談の時間が
必要なのです。

患者さんの権利とは

患者さんが持つ権利は、1995年第47回世界医師会総会にて採択された
「患者の権利に関するリスボン宣言の改訂」に明記されました。この宣言では
患者さんの基本的人権の擁護という基盤に基づきいくつかの項目が列挙されていますが、もっとも重要な項目は、インフォームドコンセントの概念です。

インフォームドコンセントとは、医療における患者さんの自己決定権のことです。
どのような治療を受けるかは患者さん自身が決める、そのために必要な様々な情報
については医療者がその情報を提供する義務を負うというものです。

相談した医療者の内容で納得できない場合は、セカンドオピニオンとして別の医療者に相談することもよいとされています。

患者さんの権利が守られて医療を受けるということは、治療方法やその効果やリスクなど、これから受けようとする医療内容の決定に当たっては、理解でき納得できるまで医療者から説明を受けることができるということです。

「患者中心の医療」を受診するということは、じっくりと相談し納得できるまで説明を
受けたうえで治療を受けるということであり、そのために必要な時間を必要なだけ
使ってもらうということなのです。

次回は、患者中心の医療機関の選択に欠かせない「患者の権利章典」について解説いたします。