患者中心の医療とは
患者さんは病気やその治療法については素人であるため、どのような治療を受けるのかについてはどうしてもお医者さんの指示に従わざるを得ませんでした。
しかし時代の流れは、患者さんがお医者さんにお任せするのではなく、患者さん自身が主体的に医療を選ぶという時代となっており、これが患者中心の医療です。
この患者中心の医療では、
①患者の期待に沿っている ②患者の権利が守られている
という2つの要件を満していることが必要です。
患者の期待に沿っているとは、患者さんの「どんな状態にしてほしいのかという希望」に合わせた処置を行うということです。
このためには患者さんは自分の希望を伝え、お医者さんは患者さんの希望を聴き取るという手順を一連の治療の開始の前に行うことが必要です。
歯科治療において患者さんから伝えられる希望には、
希望が叶う・叶わないにかかわらず、
「歯を失いたくない」
「おいしく食事をしたい」
「美しい笑顔でいた」
「入れ歯やいやだ」
などといった事柄が多いようです。
患者の権利が守られているとは、患者さんが自分の期待とおりの結果を手に入れるために必要な医療を受けるために基本的人権として守られるべき事柄となります。
患者の権利とはどんなもの?
1995年第47回世界医師会総会で採択された
「患者の権利に関する世界医師会(WMA)リスボン宣言の改訂」では
この患者の権利について6つの要素を取り上げています。
①医療に対する参加権…医療制度の構築に当たっては、 行政・医療者のみならず
市民の代表も参加できる
②知る権利と学習する権利…患者は自分の病気や治療法について医療者から
教えてもらうことができる
③安全な医療を受ける権利…感染の危険などを排除した安全な治療が受診できる
④最善の医療を受ける権利…制度や費用に関わらず、常にその条件下での
ベストの治療を受診できる
⑤平等な医療を受ける権利…人種や地位などに関わらず、平等の内容の治療を
受診できる
⑥医療における自己決定権…どんな治療受けるかは患者自らが自分の意志で
決めることができる
これらの権利のうち最も重要とされているのが、医療における自己決定権であり、
これがインフォームドコンセントです。
インフォームドコンセントは患者さんが行うこと
患者さんがインフォームドコンセントを行うに当たってお医者さんは、
患者さんを脅したりや不適当な誘導を行うことなく、専門用語などを使わない
わかりやすい言葉や方法により、
①診断の評価
②提案する治療の目的・方法・予想される期間・期待される効果
③ほかの治療方法
④提案した治療方法で予想される苦痛・深い・危険・副作用を
説明しなければならない
としています。
つまり、医療に対して知識のない患者さんは、知る権利と学習する権利を使って
お医者さんから情報を入手し、その情報に基づいて自分の期待を叶える医療を選択
するというものです。
お医者さんはこの患者さんの権利を守るための義務を負っているのです。
患者中心の医療を受けるということは、患者さん自らが患者としての権利を行使し、
お医者さんの支援を受けて、自分に合った医療を自己決定するということから
始まるのです。
あなたが自分に合った治療を納得して受診するためには、お医者さんとしっかり
コミュニケーションをとることが必要な時代になっているのです。