歯科医療現場の現状
日本では医療サービスを健康保険制度により受診することができます。
これは憲法第25条、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」という国民の生存権と国の社会的使命の規定により整備された制度です。日本は、この制度により誰でも医療サービスを受けることができる世界でも恵まれた国といえます。
他方、この制度は医療の質を低下させています。
最低限度の生活を営むために了解された医療サービスの内容は、病気により壊れた機能を最低限度の範囲で回復する内容しか有していません。
多くの国民は、健康保険制度で提供される医療が医療の標準のように解釈していますが、実際には学問としての歯科医療が提供できる医療内容の一部しか網羅していないのです。
また、この医療制度はその報酬を大変低く設定しています。
このため歯科医師は医院の経営のため、多くの患者さんを短時間で効率的に処置するシステムを導入しました。
短いアポイント時間で多くの患者さんを診察する歯科医師は、複雑な治療を行えず、丁寧な処置がしにくくなっています。
さらにこの状況は患者さんが歯科医師と治療や健康管理などの方法についてじっくりと相談する時間も確保しにくくしてしまいました。
取り換えの無い歯に治療をするにあたり十分な相談をできず、不本意な治療を受け入れなければならない患者さんをつくりだしてしまったのです。
ゴールデンルール
私が歯科医師になった当初、師匠の歯科医師からゴールデンルール(黄金律)を守って患者と向き合うことを教えられました。
「自分がしてほしいと思うことを同じようにほかの人に行いなさい」
という聖書の中に述べられている教えです。
歯科医療に精通しておりその良否が正しく判断できる歯科医師がこの教えを患者さんに適応するならば、おのずと良質の歯科医療が提供されることになります。
私が患者であるならば、勝手に歯を削られることはなく、どのような治療方法が適切なのかを教えてもらって判断し、納得して治療を受けたいと考えます。
さらにその治療は長く安定していることを希望し、その治療により快適で豊かな生活を行い、健康をしっかりと支えることができる口の健康を手に入れたいと思います。
そのためにも十分な時間をとって歯科医師と相談を行い、納得のできる治療を受けたいと望みます。
良質医療の要件
このように考えると良質の医療がどのような要件を備えていなければならないかが見えてきます。
治療技術が高く、性能の良い修復物が提供されることは当然のこととしたうえで、
これからの医療現場には以下のような要件が求められるでしょう。
このような医療体制が普及することで日本の医療レベルが向上し、医療変革がなされていくことを期待いたします。