噛むことは生きること
野生の動物はいつも食べています。
食べていないときは寝ています。
つまり、食べることが生きることであり、もし食べることができなくなるとそれは死を意味します。
人も動物であり、生きるためには食べなくてはなりません。
60兆個ともいわれる身体を構成する細胞は、働き続け、常に新しい細胞へと取り換えを行い、活動を続けるために、栄養とエネルギーを必要としています。
そのエネルギーを確保するのが消化器官と呼ばれる臓器であり、口から肛門までの間のそれぞれの臓器が役目を果たすことで活躍しています。
消化器官の中での口の役割は栄養素を含んだ食物を取り込み、砕いて消化がしやすい状態にして胃に送ることです。
ですからなんでもしっかり噛めるということが生きるということを支えているのです。
入れ歯になるとうまく噛めない、食べたいものが食べられない、という方がおられます。これでは健康に寿命を全うすることができません。
それではどのような要素が良く噛める入れ歯に必要なのでしょう?
入れ歯の歯並び
失った歯の代わりに入れ歯を入れて噛むとき、良く噛める入れ歯では正しい位置に整った状態で歯が並んでいます。
入れ歯は自分の歯とは異なり、歯ぐきの上に乗った状態で入れ歯の歯同士がつながっています。
このためバランス良く均一に力が加わるような設計になっていることが重要です。
ですから、入れ歯だけでなく残っている自分の歯も含め、すべての歯が整列して並ぶように歯並びを整えることが大切となるのです。
入れ歯の適合
入れ歯に加わる力は歯ぐきが支えます。
歯ぐきの中には骨があり、この骨に均一に力が加わり、特定の個所に噛んだ時の力が集中しないことにより噛むことができます。
ですから精密な歯ぐきの型取りを行い、ピッタリと適合した入れ歯であることが必要です。
支えの歯の管理と留め具の構造
部分入れ歯の場合では、残っている歯に入れ歯を支えさせます。
このためこの支えの歯がしっかりとしていること、そして無理をさせないことが重要です。
入れ歯を作るにあたっては、まずお口の中に残っている歯を健康にすることが必要で、むし歯や歯周病の治療が優先されます。
その後これらの歯に使う入れ歯の留め具では、支えの歯を揺らすような力が加わらないような留め具の設計を選択します。
このことにより今以上に口の中の状態が悪くなるのを防ぎます。
入れ歯の大きさ
入れ歯は筋肉に囲まれて役目を果たします。
内側には「舌」、外側には「頬」「唇」、これらにはすべて様々な筋肉があり、すべての筋肉が連携して動くことで、噛んだり、飲み込んだり、おしゃべりをしたりという動作を円滑に行っています。
ですからこれらの筋肉の動きを妨げない空間に入れ歯は鎮座しなくてはなりません。
しかし筋肉の動きを妨げない空間に適正に収まる入れ歯であったとしても、その空間の中で小さすぎるとまた入れ歯が安定せず動いてしまいます。
つまり周囲の筋肉と調和する、大きすぎず小さすぎないサイズの入れ歯であることがポイントです。
入れ歯づくりに妥協は禁物
人の命を支えるのは噛むという機能です。
この機能が健康な身体を創り、豊かな人生を支えます。
そのためにもしっかりとした入れ歯を誂えなくてはなりません。
主治医としっかりと話し合い、なんでも噛める入れ歯を、とことん追求して作ってもらいましょう。