命を守る歯の治療 ~なんでも食べられることの大切さ~

歯の数と食材

身体は60兆個ともいわれる細胞から構成されています。

これらの細胞が正しく活躍し、身体を健康に維持しているのです。そしてそのための栄養摂取が「食べる」ということです。

しかし闇雲になんでも食べればよいということではありません。
細胞の隅々にまで必要なエネルギーがたどり着くには、三大栄養素と呼ばれる、炭水化物・脂質・タンパク質をバランス良く摂取しなくてはなりません。

しかしながら歯が悪くなると、このバランスの良い栄養摂取が難しくなります。
しっかりと噛み砕かなければならない食材は避けるようになり、反対に空腹感を満たすことができ、噛み砕く作業が少なくても食べられる糖質の摂取量が増えてしまいます。
このことにより身体の調子が悪くなり、病気を引き起こすのです。

グラフ1:失った歯の数と栄養摂取量の関係、
炭水化物だけが歯の喪失と反比例して増える

なんでも食べられる入れ歯づくり

この状況を回避するためには、なんでも食べることができるしっかりとした入れ歯を作ることが求められます。

しかし入れ歯は自分の歯とは異なり、本来は食物を噛むための道具ではない歯ぐきを用いて噛みます。
実際に噛むときには、歯ぐきに大きな力が加わりますから、歯ぐきの広い範囲を使って噛む力を分散させつつ、噛める構造にしなくてはなりません。
このため残っている歯や場合によってはインプラントなどの手助けをうまく活用し、噛む力を効果的に負担させることが必要となります。
人によって歯を失うに至った経緯が異なりますから、負担のさせ方をどのように行うかが、歯科医師としての診断力と治療計画立案力になるのです。
そしてその二つの力を支えるのが、個々の患者さんの口の中に対する正しい理解です。

良く噛める入れ歯づくりは、精密な検査から

多くの患者さんや歯科医師においても、失った歯の作り方にのみ目が行きがちです。しかし大切なことは、

あなたの歯が

「なぜ抜かなくてはならなくなったのか」

「入れ歯を必要とするようになったのか」

という今までの歯を失ってきた経緯自体が重要なのです。

もし歯周病が原因で歯を失ってきたとすると、顎の土手の骨は貧弱であり、歯のみならず失った歯ぐきを補う入れ歯が必要です。
咬み合わせが原因で歯を失った方であれば、適正な顎の位置や動きを確保する入れ歯の設計と作り方が求められます。
虫歯であれば、支えとなる歯を清潔に管理できる構造が求められるのです。

つまり、より良い入れ歯づくりには、患者さん個々の口の中の状態とその状態を引き起こした経緯を把握し、今以上に悪くならないために何が必要かを考えなければならないのです。
歯が無いから入れ歯を入れましょうではなく、なぜ歯を失ったのかを正しく理解することから治療を始めてください。

そのための精密検査を受け、その状況に至った原因が見つかれば、良く噛める入れ歯づくりのポイントが見えてきます。