健全な口が健康の基本 ~これからの歯科医療の役割~

目指せ! ピンピンコロリ!

長野県佐久市の成田山参道にはピンピンコロリ地蔵尊というユニークなお地蔵さんがあり、多くのご年配の方々がお参りにお越しになります。
このお地蔵さん、健康なまま天寿を全うする意味の「健康で長生きし【ピンピン】寝込まず楽に大往生する【コロ】」をヒントに命名されたのでした。

ではどのようにすればピンピンコロリの人生が迎えられるのでしょうか?

ピンピンコロリで人生を終えるには、天寿を全うするその時まで病気にならないことが必要です。
そこで予防医療の観点から病気になる原因を探ってみました。
すると、病気になるには大きく3つの原因があり、これらの原因を取り除けば病気にならないということがわかりました。

この3つとは、

①感染【体の中にはないものが入り込む】

②栄養失調【身体を維持するために必要な栄養素の種類と量が足りない】

③酸素【細胞が必要とする酸素が適切に取り込まれない】

です。

そしてこれら3つの事柄は口の管理と深く関係していることもわかりました。
ですから、ピンピンコロリを目指すのであれば、口を健康に保つことが重要となるわけです。

感染を防ぐ歯科医療

身体の中に本来無いものが入り込むことを感染といいます。

冬に流行するインフルエンザもその一つであり、ウイルスが身体の中に入り込んで発症します。
これらの細菌やウイルス(※感染ではないが水銀など有害金属の体内への蓄積も同様に考える)は、3大感染経路を伝って身体の中に侵入します。
3大感染経路とは、上咽頭(鼻と口のつながる喉の上部)、歯周病発症部根尖病変部(歯の根の先端の炎症部分)なのです。
3つのうち2つは歯科治療で取り扱う病気です。
また上咽頭部からの感染は、上咽頭部の通気量が少ないと起こりやすく、これもまた顎の成長発育、口腔周囲の筋の使い方と関連しています。

ですから、口にまつわる病気は徹底的に取り除き感染を未然に防ぐことが病気を防ぐことになるのです。

栄養摂取を守る歯科医療

歯が悪くなると食材を選ぶようになります。
硬いもの繊維質のものなどは食べずらくなり、結果お米や麺類など、お腹の満腹感を満たそうと炭水化物に偏った食生活に陥ります。

この結果栄養摂取の種類と量に偏りができ、細胞の修復機能が低下したり、酵素やホルモンが作れなかったり、身体の酸化が進んだり、また血糖値の調整障害などを引き起こすのです。

どのような食材も選ばずにしっかりと食べられる、噛める口を確保することは健康管理の基本であり、歯科医療の役割です。

呼吸器を育てる歯科医療 口は消化器の一部であり、身体に酸素を取り込む呼吸器ではありません。
しかし呼吸器の鼻と口は上下の関係であり、なおかつ喉(咽頭)の部分では酸素と食べ物の通り道を共有しています。
このため口という臓器の健全な成長発達が呼吸にも影響を与えますし、また呼吸の仕方が口にも影響します。

近年歯並びが悪い子供たちが増えていますが、そのほとんどの子どもたちに口呼吸の状態が認められます。
口呼吸をすると、舌の位置が下がり、上あごを押すことが無くなるため顎の成長が少なくなり、歯ならびを悪化させます。
さらに舌の落ち着くスペースが不足し咽頭部を塞ぐため、睡眠時無呼吸症のリスクを高めるのです。
このような病気などで酸素の量が減ると、脳卒中や心筋梗塞などの病気のリスクが何倍にも高まるのです。

口を健康に成長発達させる歯科医療としての支援もまた、ピンピンコロリを目指すための重要なことなのです。