噛めない入れ歯
すべての歯を失ってしまうと入れ歯を作ることになります。
この入れ歯は自分の歯とは違って噛む力を歯ぐきで支える構造になっています。
さらにすべての歯は「床」と呼ばれる失った歯ぐきを再現した土台部分でつながっているため、どこかに力が加われば、他のところが動くという特徴を持っています。
たとえば右側で噛んでも左側が動きますし、前歯で噛んでも奥歯が動くといった状態です。
このように咬む動作をするたびに入れ歯が動くことにより、歯ぐきを傷め、噛めない状態を引き起こしているのです。
入れ歯が動くと、床と歯ぐきとがこすれた場所で痛みが出ます。痛みが出ると力を入れて食べ物を噛むことができません。
そのため何とか噛める場所を探して入れ歯を使うようになるのです。しかし部分的に無理な力が加わり続けると歯ぐきの下にある骨が壊れて痩せてしまい、さらに入れ歯が合わなくなってしまうのです。
ですからよく噛める入れ歯を作るうえで大切なことは、噛んだ時に動かない入れ歯を作ることなのです。そのためには3つの要素を忠実に守った入れ歯づくりが必要です。
正しい顎の位置で入れ歯を作る
下あごは左右の耳のやや前方の顎関節で上顎とつながっており、この関節は様々な方向へ自由に動くことができるのが特徴です。
しかし大きな力で噛むときには、この顎関節の最上部で最も収まりの良いくぼみに左右の下顎の骨が収まり、噛む力を支えます。
ですからこの場所を見極め、この場所で上下の歯が噛みあうように作ることが重要となります。
入れ歯を作るとき歯科医師が噛んでくださいという指示により噛む位置を決めていますが、単純なこの方法だけでは正しい位置からずれてしまいます。
顎の位置を特定する専用の器具を用いて正しい位置を決めることが必要です。
噛む力を支える場所に
入れ歯の歯が並んでいる
歯を失った口の中には、歯ぐきの土手があり、その外側には唇や頬、その内側には舌があります。
この中に入れ歯が収まるのですが、この入れ歯の納まる場所が重要です。
唇・頬・舌の位置を邪魔することが無く、そのうえで入れ歯に並んだ歯の位置は顎の骨の土手に対してまっすぐに力が加わるように並べることが大切です。
このような位置に歯を正しく並べることにより、大きな力で噛んだ場合でも入れ歯がずれることが無くなり、痛みを起こすことが無くなります。
スムーズに動く
すり合わせを調整する
人が食事をするときに行う「噛む」という口の動きは、単純な上下運動ではありません。
臼歯と呼ばれる奥歯では、食べ物をすりつぶすような左右の動きをします。
牛が草を食べるときには顎を左右に滑らせるように動かしますが、これが奥歯を使った噛み方です。
人によりその動き方は異なりますが、この動きに合わせてすべての奥歯の形がスムーズにすり合わせられるように調整することが大切です。
このような歯の形に調整が完了すると上下の入れ歯を噛みあわせた状態で下あごを左右に動かしても上顎の入れ歯は動きません。
これら3つの要素を守れば快適な食事が楽しめるようになります。
なんでも食べれる快適な入れ歯で、楽しい毎日をお過ごしください。