口から入る細菌
感染症と呼ばれる病気は、本来体の中にはいるはずのない、さまざまな細菌が体の中に入り込むことにより起こります。
ではこの細菌はいったいどこから体に入るのでしょうか?
細菌が体の中に入るルートは、注射や怪我など本来は外部と接触しないところから入るケースを除けば、空気の通り道となる呼吸器、さまざまなものに触れる皮膚、そして口から始まり肛門まで人が栄養を摂取するための消化器が主なところです。
この中では、消化器が最も細菌と接触している場所であり、その中でも口の中が最も細菌の種類が多い場所なのです。
しかし口の中には多くの細菌が住み着いている反面、細菌が体内には入らないような防御の仕組みも備わっているため、基本的には細菌が数多く住み着いていても問題はありません。
しかしながら口の中に病気が発生すると事情は変わります。体の中に細菌が入り込む防御システムが働かず、病気の個所から直接体内に様々な細菌が入り込むのです。
多くの方は口の中に病気が起こっていることを知らずに放置している状況があることと、口は最も多くの種類の細菌が住みついている状態であることを考え合わせると、人に病気を発症させる多くの細菌は口から感染していると言えます。
口の中の病巣
口の中に病気があるとき、口の中の細菌が体内に入り込めるルートができるわけですが、その感染源となる場所を病巣と呼びます。口の中に発生する病巣には次にあげるようなものがあります。
①むし歯
むし歯が進行すると歯の中の歯髄【神経と血管がある所】とつながり
そこから細菌が入る
②歯周病
歯と歯ぐきの隙間の溝に発生するため、細菌の住処となり、炎症のある歯ぐき
から細菌が入る
③根尖病変
歯の根の先端にできる膿の袋、虫歯の進行を放置したり、不完全な歯の根の治
療によりでき、そこから細菌が入る
これらの病巣は完全に取り除くことができますが、病巣の存在に気づかなかったり、またそれらの徹底した除去を行わない方が多く、かなりの確率でこれらの病巣を持っている方がいます。
病巣感染による全身疾患
この病巣が原因となって起こるのが病巣感染です。
病巣感染とは、口に限らず体のどこかに慢性の感染症があり、これが細菌の体への入り口となって細菌が入り込みます。
そして病巣とは離れた臓器に2次的に病気を起こすことです。
病巣との関係性が解明できないことや病巣と発病した場所が離れていることにより直接的な関連性が考えにくいという特徴があります。
リウマチ熱や敗血症などは口からの病巣感染としては良く知られていますが、たとえばアトピー性皮膚炎や掌蹠膿疱症といった病気がむし歯や歯周病などの治療を行い、口の中の慢性の感染を取り除くことによって治癒するようなことがあり、感染症ではないこれらの病気も歯や口にまつわる病巣感染ではないかと考えられます。
このように他の場所が原因で発生した別の場所の病気の炎症などの症状に対し、ステロイドなどを用いて消炎治療を行ったとしても病気自体が治らないことは良くあります。これは発生した症状に対し対症療法を行っているためであり、病気の本当の原因を排除するという原因療法を行っていないためです。
体に不調を訴えて医者に行くと、病気の治療に先駆けて口の中のチェックと治療から始める国もあるほどで、医療の世界では、これらの病巣を取り除くことが重要と着目されています。
全身の健康のためにも、口の中に病巣が無いかを確かめ取り除き、健康に保っておくことが賢明です。